2016
低価格で飲みやすいと評判のチリ産ワインの輸入量が大きく伸びている。昨年1~11月の累計は、首位に君臨してきたフランス産に肉薄し、年間のトップ争いが注目されている。日本の酒造大手各社は今後もチリ産ワインの売れ行きが拡大すると見込み、新商品の販売を進めている。
【グラフで一目瞭然 国別のワイン輸入量】
財務省の貿易統計によると、昨年1~11月のワイン輸入量は、チリが4684万リットルと前年同期比で18.0%増え、フランス(3.2%減の4806万リットル)と競り合っている。10月までの累計はチリが4295万リットルとフランス(3869万リットル)を上回っていたが、11月にフランスの「ボージョレ・ヌーボー」が発売され、逆転された。
国別のワイン輸入量は、フランスが長年首位の座を守ってきた。ボルドーやブルゴーニュなど生産地ごとにブランド化された強みを発揮してきた。2004年の年間輸入量はフランスが5928万リットルと、2位だったイタリア以下を大きく引き離していた。
チリも04年には793万リットルとフランスに大差をつけられていた。だが、その後に輸入量が急増し、雑誌などで紹介され人気が定着。13年にはイタリアを抜いて2位に浮上し、さらに首位をうかがうまでになった。
日本国内で売れ行きが伸びたのは、「価格が安い割においしい」とされ、特別な記念日などではなく、日常の食卓で飲むワインとして選ばれるようになったためだ。
メルシャンによると、量販店で販売されたボトルワイン(750ミリリットル)の平均価格はフランスが1029円だったのに対してチリは602円と4割程度安かった。日本とチリの経済連携協定(EPA)が07年に発効し、ワイン関税の段階的な撤廃が決まったことも追い風となった。
大手酒造各社にとってもチリ産ワインは主力となっている。アサヒビールは12年に発売した「アルパカ」の販売量が昨年100万ケース(1ケース=750ミリリットル瓶12本)を超え、同社のトップブランドに成長した。サントリーワインインターナショナルは昨年9月、チリ企業と共同開発した日本限定の「サンタ・バイ・サンタ・カロリーナ」を販売。売り上げを大きく伸ばし、今年3月にも第2弾を発売すると決めた。
また、メルシャンは、参考価格2450円と高めにした「カッシェロ・デル・ディアブロ」の新シリーズを3月に発売予定。チリ人気を背景に、フランスが強い高級市場も開拓したい考えだ。
昨年1年間の国別輸入量は財務省が来週発表する貿易統計で判明する。「年末はクリスマスなどのイベントが多く、記念日に飲まれやすいフランスが有利」との見方もあるが、業界では「チリが首位になったらキャンペーンなどで売り込みを強化したい」としている。【松倉佑輔】
◇経済連携協定(EPA)
主に2国間で関税を撤廃したり、投資を促すルールを作ったりする包括的協定。日本は15カ国・地域と結んでいる。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は多国間のEPA。発効すると、米国産などのワイン関税が段階的に撤廃される。日本は欧州連合(EU)ともEPA交渉を進めており、ワイン関税も段階的に撤廃する方向で協議している。