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 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から間もなく5年となる。いまだに立ち入りすら制限されている「帰還困難区域」に指定されている福島県大熊町へ2月、地権者の男性の一時帰宅に同行させてもらった。主を失った住宅は荒廃が進み、子供たちの声の聞こえなくなった教室には“あの日”のまま、ランドセルやノートが散らばっていた。除染廃棄物の黒い袋が積み上がるこの場所に、人の気配が戻るのはいつになるのだろうか。(緒方優子)

■防護服姿でゲートの内側へ

 「はい、富岡」「0・5(マイクロシーベルト)」

 午前10時すぎ、大熊町へ向かう車内。ハンドルを握る男性が通過した地点を告げると、後部座席の友人が測定した放射線量を読み上げる。常磐道を走る車窓から、所々に除染廃棄物の黒い塊が目に入る。

 50代の男性の家は、福島第1原発から約2キロの距離にある。結婚後、初めて建てた「マイホーム」。その家で子育てもした。仕事で転勤を重ねたが、定年後は夫婦でゆっくりと大熊で暮らしたい。そんなささやかな夢は、原発事故で遠のいた。

 男性は事故の5カ月後から、知人らとともに定期的に一時帰宅を続け、自宅と周辺の放射線量の測定を続けている。家にはもう住めないかもしれないが、この地域がどう変化していくのか、どこへ向かっているのか-。その手がかりをつかむための「定点観測」に、1年前から同行させてもらっている。

 高速道路のインターチェンジ(IC)を降り、スクリーニング場で許可証を提示していつもの“装備”を受け取る。白いキャップに、防護服とマスク。足下は布とビニールカバーで2重に覆い、手にも綿手袋の上からゴム手袋をつける。汚染を区域外に持ち出さないようにするため、装備は厳重だ。スクリーニング場には数名のスタッフが待機し、手続きや着替えの手伝いをしてくれる。女性スタッフが多いのが印象的だ。

 国道6号から脇道に入り、警備員のいるゲートを超える。この先が、「帰還困難区域」だ。

■「娘と通った」道、乱れた教室、朽ちていく家…

 男性が一時帰宅で必ず立ち寄るのが、自宅から車で10分ほどの大熊町立熊町小だ。「昔、娘とこの道を歩いて通ったんだよ」。道中、そう教えてくれた。

 小さなグラウンドには、草が背丈ほどに伸び放題になって枯れていた。校舎のアスファルトの隙間からも草が伸び、5年という月日の長さを改めて感じた。

 窓越しに教室の中を見ると、床にはランドセルやノートが散乱し、机の上には開かれたままの辞書が置かれていた。事故前、熊町小には300人以上の生徒が在籍していたという。ここにいた子供たちはあの日、どんな混乱の中にあったのだろうか。今、避難先でどんなふうに生活しているのだろうか。

 「たくましく」

 こう刻まれた石碑の近くには、ひっそりと梅の花が咲いていた。

 昼過ぎ、男性の家に到着した。2階建ての家と庭を今、支配しているのは、植物だ。庭にはツタ性の植物がはい回り、家の外壁やひさしにまで伸びている。

 家の1階のガラス戸は割れ、和室の網戸も倒れている。不在の間に何者かに石を投げ込まれたといい、修復してもまた壊されたため、今はそのままになっている。

 家の中に入ると、湿った空気とカビの臭いが鼻をつく。瓦が落ちた屋根からの雨漏りは次第に激しくなり、2階の床が腐食して1階まで崩れ落ちた。天井板はほとんどはがれ落ち、階段には、動物のふんも転がっている。

 「はじめに1人で来たときは、気が狂いそうになったよ」。男性は、放射線量の測定を続けながら、当時の思いをそう打ち明ける。

 1階の居間と廊下を仕切る扉の枠に、「H(平成)9」「H10」いくつも刻まれた印があった。「これはね、娘の身長」と、男性がうれしそうに指さした。

 変わり果てたように見える家の中にはまだ、あちこちに家族の大切な思い出が残っている。

■廃棄物の黒い袋がぎっしりと

 男性の家は、福島県内の除染で出た汚染土などを長期保管する「中間貯蔵施設」の建設予定地内にある。実施主体である国と地権者との交渉が進まず、これまでに取得できたのは用地全体(1600ヘクタール)の1%未満にとどまっているが、予定地内には県内各地から次々と汚染土が運び込まれている。

 この日も、除染廃棄物を運ぶ大型トラックがひっきりなしに行き来し、昨年4月にはがらんとしていた保管場には、黒い袋がびっしりと積み上げられていた。「いつまで来られるか、わからないな」。男性は、そう思い始めている。

 帰還困難区域に入るたびに、着実に何かが変わってきていることを肌で感じる。

 ただ、これが「復興」に向かっている町の光景なのだろうか。だとすれば、一体誰のための「復興」なのだろうか。

 間もなく事故から5年。住民不在の町はまだ、将来像を描けずにいる。

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