2016
■人口比を忠実に定数に反映
■自民案、1人別枠方式を維持
衆院選挙制度改革をめぐり、衆院に設置された有識者調査会は「一票の格差」是正の有効策として「アダムズ方式」と呼ばれる手法を導入するよう求めた。どのような仕組みなのか。Q&A形式でまとめた。
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Q アダムズ方式とは
A 都道府県や比例代表ブロックといった一定の地域の人口に基づき、それぞれ定数をいくつ配分するか決める計算方式の一つ。
Q 仕組みは
A 人口をある数(X)で割り、得られた商の小数点以下を切り上げた値を定数とする。衆院の選挙区の場合、Xは都道府県ごとの定数の合計と、総定数が同じになるように調整する。
例えば、総定数5を人口65万人と35万人の2県に割り振る場合、Xを定数1人当たりの人口となる20万として割ると、それぞれ3.25と1.75。小数点を切り上げると4と2となり、総定数の5を上回ってしまう。そこで、総定数の範囲にするため、Xを調整して22万として割ると、2.95と1.59。小数点を切り上げれば3と2になり、総定数と同じになる。
Q 誰の発案か
A 第6代米大統領のアダムズ氏が提唱したとされる。18~19世紀の米国で、州と人口が増えたことを受けて、下院の定数配分方式をめぐり考案された。
Q メリットは
A 人口により比例して定数を配分できるとされる点だ。また、小数点以下を切り上げることによって理論的には人口が1人でも定数1が配分されることから、人口が少ない地域にも配慮することができる。ただ、1人は確実に配分されることから、人口の少ない県に配慮して都道府県にあらかじめ定数1を配分し、残りを比例配分する従来の「1人別枠方式」と同じという批判もある。
Q 最高裁の違憲判決は回避できるか
A 最高裁は「一票の格差」を「違憲状態」とした判決で、1人別枠方式の見直しを求めている。アダムズ方式に基づき区割りも大幅に見直せば、最高裁の要請に応える形となる可能性がある。
Q 自民党案は
A 選挙区は都道府県人口を現行定数より「1」少ない数で割り、得られた商の小さい方から6削減する1人別枠方式を事実上維持した「0増6減」という内容。アダムズ方式なら区割りの変更が20都県に及ぶが、自民党案だと6県だけで済み、区割り変更に反発が強い党内事情に配慮した。