2016
【ロンドン時事】ドイツのスポーツ用品大手アディダスが、ドーピング問題に揺れる国際陸連(IAAF)の協賛社から撤退する方針であることが24日明らかになった。
英BBC放送(電子版)が報じた。同社は2008年から11年間の長期契約を結んでいた。
アディダス社が撤退した場合、IAAFの損失は3000万ドル(約35億円)以上となる見込み。
2016
4月の電力小売り全面自由化も見据え、発電出力千キロワット未満の小規模な水力発電「小水力」の事業化に企業の関心が高まる。大規模な水力発電に比べ、水の自然な流れを生かす小水力は周辺環境への負荷を減らし、ほかの再生可能エネルギーより安定的に発電できる。これまで採算性が課題だった100キロワット以下の小水力でも、工事の効率化などで収益を見通せるようになったことも背景にある。
■工事効率化で収益
太陽光や地熱発電など再生エネに取り組む新電力の洸陽電機(神戸市)は、岩手県八幡平市の農業用水路で37キロワットの小水力の建設を進め、4月の運転開始を目指す。規模は92世帯分の電気使用量だ。再エネの電力を国が決めた価格で販売する「固定価格買い取り制度(FIT)」を活用し、東北電力への売電を検討する。同社は「必要な工事を最小限に絞り、採算性を確保した。天候に左右される太陽光に比べ、水力は小規模でも安定した電源になる」と説明。民間事業者による東北での100キロワット以下の小水力の売電事業は初めてとなる。
その100キロワット以下の全国初の取り組みは昨年、滋賀県長浜市の農業用水路で始まった。大阪ガスの子会社、エナジーバンクジャパン(大阪市)などが建設した15キロワットと10キロワットの小水力2基がそれぞれ7月、11月に運転を開始し、FITで新電力最大手のエネット(東京)に販売している。
小水力の建設費は、出力200キロワット前後の発電機で1キロワットあたり80万~100万円かかるとされ、採算ラインだった。一方、出力100キロワット以下の小規模なものでは、建設費が1キロワットあたり200万円近くもかかり、採算性が課題になっていた。
しかし近年、設置ノウハウの蓄積で工事の効率が高まるとともに、FITによって電力の販売価格が一定に決められたため、小水力が事業として成り立つ見通しが立ち、企業の進出も進んだ。
■普及をサポート
これまで小水力の担い手は、自然環境に配慮した自治体や市民団体、水路を管理する水利組合などが主だった。先駆けは平成17年12月に設置された京都の景勝地、嵐山の小水力で、桂川の上流約150メートルに設けた出力5・5キロワットの発電機で渡月橋の街路灯60基の電源に活用している。企業や地元商店主などでつくる「嵐山保勝会」が手掛けた。東日本大震災以降、自治体やNPO法人などの視察が増えるなど注目を集め、今春発足のミャンマー次期政権を主導する野党、国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー氏も25年4月に見学した。
小水力は増加傾向だ。経済産業省資源エネルギー庁によると、全国でFITを活用した千キロワット未満の小水力導入は27年8月で263件にのぼり、25年8月の27件から10倍近く増えた。
普及をサポートする動きもみられる。関西電力は昨年11月に、近畿、北陸、東海の3地域に「水力調査所」を設置。小水力をはじめ水力発電を検討する自治体などの支援窓口として機能する。関電は調査から設置工事まで一貫受注し、収益性を高める狙いもある。
電力小売り全面自由化を控え、電力業界に新規参入する企業にとって、電源確保は課題だ。小規模でも安定した発電が可能な小水力には注目が集まりそうだ。(藤谷茂樹)
2016
同じ会社、同じ経営陣でこうも変わるものなのか――。
業績不振に苦しんでいたソニーが躍進している。2015年4~9月期の当期純利益は1159億円と、上期としては5年ぶりの黒字化を達成。大手電機メーカー6社(パナソニック、シャープ、日立製作所、東芝、三菱電機)の中でもトップに立った。通期の当期純利益は1400億円を計画しており、前期の1259億円の赤字から大幅に改善する見込みだ。
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株式市場の評価も高い。2014年10月末に2.6兆円だった時価総額は昨年5月に4.8兆円まで膨らんだ。足元は株式市場の低落を受けて3.1兆円(1月22日時点)まで縮んでいるものの、それでもリーマンショック後にいち早く業績を立て直した“優等生”であるパナソニックや日立製作所を上回る。
■ CMOSは世界4割占有、過去最速で売れるPS4
「電機業界の負け組」――。約1年前、平井一夫社長ら経営陣は厳しい批判にさらされていた。成長の柱に据えていたスマートフォンが売れず、2014年9月に携帯電話事業で1800億円もの減損を発表。併せて2015年3月期の業績見通しを下方修正し、1958年の上場以来初の無配に転落した。リーマンショック以降の2009年3月期から9年間で累計約1兆円の赤字を積み上げたことになる。
そんなどん底から、ソニーは突如としてはい上がってきた。今のソニーの実像は、セグメント別の利益で見るとははっきり浮かび上がる。今2016年3月期に利益を最も稼ぐ見込みなのはソニー生命を中心とした金融だ(営業利益1750億円を計画)。
そして成長著しいデバイス(同1210億円)とゲーム(同800億円)が続く。米アップル、韓国サムスン電子、中国ファーウェイ。世界の名だたるスマホメーカーがこぞって採用するソニーのデバイスがある。CMOSイメージセンサーだ。「電子の目」ともいわれ、スマホのカメラ部分に欠かせない。ソニーは高感度化や低ノイズ化、小型化などの技術の高さでライバルに先行する。2014年の世界シェアは4割強。ソニーの製品では今や数少なくなった世界ナンバーワンの商品だ。
ゲームではプレイステーション4(PS4)が驚異的な成長を見せている。発売から2年で全世界での累計実売台数が3000万台を突破した。PS史上最速のペースで売れており、マイクロソフトや任天堂のライバル機を凌駕する。
2016
スーパーマーケットのレジで現金を引き出せるようになる-。買い物の支払いと同時に金融機関の口座から代金が引き落とされる「デビットカード」を使ったユニークなサービスが来年にも解禁となる見通しになった。現金自動預払機(ATM)の少ない地方や郊外での利便性の向上などが期待されるが、一方で決済手段としてデビットカードの利用率が低い日本で、新たなサービスが浸透するか疑問の声も上がっている。
デビットカードで小売店などから現金を引き出す仕組みは、「キャッシュアウト」サービスと呼ばれ、実はデビットカードが普及する欧米ではすでに広く利用されている。昨年12月末に金融庁の金融審議会が「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」の報告書の中で、規制緩和の方向性を打ち出した。
「何ドル必要?」。米国でスーパーのレジでは店員がこう声をかけてくるという。なじみのない日本人にとっては「?」となるが、これがキャッシュアウトのさわりだ。具体的にはどのような流れで現金を引き出すのか-。
例えば、5000円の商品をスーパーで買い物するついでに1万円の現金も引き出したいとする。この場合、レジで1万円のキャッシュアウトを店員に伝えると、デビットカードから1万5000円が口座から引き落とされる。そのうち5000円を支払いに回され、店員から1万円を受け取る仕組みだ。
ここで使うのは、金融機関のキャッシュカードをそのまま買い物に使える「J-デビット」のほか、銀行とクレジットカード会社が提携して発行し、クレジットカード加盟店で使える「国際ブランドデビットカード」。デビットカードと同じで、ボタンで暗証番号を入力するだけで手続きは済む。
利用手数料は店側の負担だ。レジを無料のATMとして利用できる格好となり、ATMの設置が少ないような地域ではATMの代わりのインフラになる。しかも、ATMのように設置場所や時間帯を気にする必要がなくなるのも大きな利点だ。
さらに、金融庁はキャッシュアウトについて、レジだけでなく、宅配業者やタクシーの支払い時などにも採り入れることを検討している。携帯型端末を活用してデビットカードを読み取り、自宅やタクシーの車内などで預金引き出しの手続きができれば、外出やATMを探し回るのが難しい高齢者らにとっては助けになりそうだ。
金融機関には早くも今回の規制緩和に対応する動きが出ている。みずほ銀行は法整備を前提に、平成29年度からサービスを開始する準備に入った。同社はJ-デビットに力を入れており、「キャッシュアウトは、J-デビットのカンフル剤になるかもしれない」(広報室)と期待する。
ただ、キャッシュアウトの実用化に向けては今後まだまだ詰めるべき点も多い。金融庁は年内にも関連政省令を改正し、キャッシュアウトをATMと同様に銀行法令上の「預金の払出し」の外部委託として整理する。銀行の委託先となる小売店などの管理体制についても整備する必要がある。ATMと違って、レジに入れることができる現金や宅配業者が持ち歩ける現金には限りがあることから、キャッシュアウト1回あたりの限度額を設定するなど「業界の実務的な意見を聞きながら、ルールをつくらなければいけない」(金融庁幹部)としている。
一方で、金融機関側もルールづくりが必要となる見通しだ。例えば、現金を引き出すだけの利用を制限して買い物に付随するサービスとするなど、小売店と利用者との間でトラブルが生じないようにきめ細かなルールを今後、業界団体として整備するとみられる。
また、金融機関はデビットカードの加盟店とキャッシュアウトの事項を盛り込んで契約し直す必要もある。スーパーなどの加盟店にとっては「新たなサービスが集客につながるかもしれない」と期待する声がある一方で、店員の手間が増えたり、レジに現金を引き出そうと多くの利用者が並んで買い物をする客に迷惑がかかってしまうとの懸念の声もある。店側の手数料負担や防犯上のリスクの増加などもあり、契約更新が円滑に進むかは不透明だ。
キャッシュアウトの仕組みができれば、デビットカードはますます利便性が高まるが、「欧米に比べ、デビットカードが利用されていない状況を勘案すると、あまり使われないのではないか」(関係者)との指摘もある。個人消費に占める決済手段の割合はクレジットカードでも14~15%、デビットカードに至っては1%未満で、日本は現金で支払う習慣が根強い。加えて「スイカ」などの電子マネーの普及も始まっている。
あまり使われなさそうであれば、小売店などにとっては導入するメリットを見いだしにくいのも事実だ。日本でもキャッシュレス化はじわりと進んではいるものの、キャッシュアウトが手軽に利用されるような土壌ができるまでには、もうしばらく時間がかかるかもしれない。(万福博之)
2016
株価下落が止まらないなか、政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド、SWF)による日本株の売り観測が広がっている。
SWFは、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資庁やシンガポールのテマセク・ホールディングス、ノルウェー政府年金基金、サウジアラビア通貨庁、中国投資有限責任公司などが有名だ。一時は日本の大手企業の大株主に名を連ねていたが、その多くが消えているという。
■15年の日本株、海外勢は7年ぶりの売り越し
東京証券取引所が2016年1月7日に発表した15年1月5日~12月30日の投資部門別株式売買動向によると、海外投資家は日本株を2509億円も売り越した。海外勢が年間を通じて日本株を売り越すのはリーマン・ショックのあった2008年以来7年ぶりのことだ。
2015年の海外勢は、1月に8000億円を超えて売り越した後、2~5月は買い越し、6~9月は売り越し、10~11月は再度買い越した。しかし、8~9月の2か月で3兆7355億円を売り越し。9月の月間売越額の2兆5772億円は、ブラックマンデーのあった1987年10月を抜き、過去最高を記録した。中国株の暴落に揺れた夏場の歴史的な売りが、年間ベースでも尾を引いたとみられる。
こうした海外勢の「日本株売り」の背景に、中東や中国の政府系ファンドがいるということのようだ。
政府や中央銀行など国営や公的機関が運用している政府系ファンド(SWF)には、サウジアラビアやUAEなどのように原油や天然ガスで得た利益を原資とするファンドと、中国やシンガポールなどのように外貨準備高を運用原資とするファンドがある。
なかでも2007年前後に起った世界的な資源価格の急騰を背景に、ロシアやクウェート、カタールなどの原油供給国によるファンドが増加。その運用金額が急増したことで世界的に株式市場への影響力が高まった。
最近、「日本株売り」が目立つとされるのは、こうしたサウジアラビアなどの原油の輸出収入に依存しているSWF。原油相場が1バレル30ドルの節目の水準を割り込んだことで原油収入が減少。それにより経済成長が鈍化し、自国の財政もひっ迫、政府が現金を捻出するためにSWFの資産を売却したりしているとされる。
これまで原油高の追い風に投資先を拡大、利益を得てきた原油産出国のSWFがいま、その富を取り崩しはじめているわけだ。経済の先行き不透明感から、株価水準が高いうちに売却して利益を得ようという狙いもある。
ただ、こうした動きが加速すれば、さらに株価を押し下げるかもしれない。