2015
■人身事故12年連続ワースト
大阪府内で無免許ドライバーによる交通事故が多発している。大阪府警によると、無免許運転の人身事故の発生件数は12年連続で全国ワースト1。今年も高い水準で推移しており、死亡事故も起きている。府警は順法意識の低い「常習者」の存在が背景にあるとみて、無免許運転の取り締まりに特化した専門チームを新設。「即逮捕」を前提に対策に乗り出した。
7月1日、同府泉大津市の自営業の男(48)の自宅前。近くで張り込んでいた2台の捜査車両が、男の運転する乗用車を前後から挟み込んで停車させた。
男は過去に4回、交通違反点数の累積で免許取り消し中に車を運転したとして摘発されていた。にもかかわらず、懲りずに運転を続ける無免許運転の悪質な“常習犯”だった。
男は道交法違反の疑いで現行犯逮捕されたが、「事故さえ起こさなければ、逮捕されないと思っていた。なんで(無免許だと)分かったのか…」。口をついて出た言葉からは「規範意識のかけらも感じられなかった」(府警幹部)という。
府警交通指導課によると、府内では昨年、無免許ドライバーによる人身事故が189件発生。平成15年から全国ワースト1を記録しているほか、無免許運転の摘発も1909件と、8年連続で全国最多だった。
昨年摘発したひき逃げ事件645件のうち、1割以上の83件が無免許運転だったことも判明。こうした状況に歯止めをかけようと、同課は今年5月に「常習無免許検挙対策プロジェクトチーム」を発足させた。
過去に無免許運転で摘発した運転者のデータや、各警察署に寄せられる無免許運転の情報をチームに集約。通常、無免許運転は交通切符(赤切符)で処理されることも多いが、チームでは現行犯逮捕を前提に、防犯カメラの映像などから常習者の走行ルートの割り出しなどを行っている。
無免許や飲酒運転を繰り返す悪質ドライバーの摘発を目的とした専従部隊は、京都府警や奈良県警でも発足しているが、大阪府警は唯一の「無免許」専門部隊。11月末までに42~74歳の男6人を現行犯逮捕した。地道な取り組みの効果もあってか、今年の無免許運転による人身事故は11月末までに160件と、昨年を下回るペースとなっている。
ただ今年は、昨年はゼロだった無免許運転による死亡事故が起きた。
大阪市中央区で10月31日、乗用車同士が出合い頭に衝突し、一方の車に乗っていた10代後半~20代前半の男性3人が死傷した事故では、自らも重傷を負った20代の男性が、無免許運転で一方通行を逆走したことが事故につながった。
今月20日には、同区内の交差点で2人乗りのバイクがタクシーと接触。バイクを無免許で運転していた高校1年の男子生徒(16)が死亡している。
同課は「常習的な無免許運転者は罪の意識が低く、車やバイクを運転することの危険性を理解していない傾向にある。今後も厳しく対応し、悲惨な事故を防ぎたい」としている。